あなたがやりたいこと、どのビデオスイッチャーならできる?
今月の特集は(若干STAFF BLOGとネタ被りしましたが)ライブ配信ができるビデオスイッチャーを中心に、その周辺機材をご紹介したいと思います。
この記事にたどり着いた多く方は、ライブ配信やWeb会議、ビデオ会議といったオンライン用途をお考えだと思いますので、その話題が軸となっています。オフラインでも機能や使い方は基本的に同じですが、この点は予めご了承ください。
ご紹介する機材の早見表
機材の写真をタップすることで記事の場所へジャンプできます。
以下の表は横にスクロールできます
難易度 | 価格帯 | 映像入力 | 映像出力 | 配信画質 | その他 | |
---|---|---|---|---|---|---|
VR-4HD |
ふつう | 高い | HDMI × 3、 HDMIまたはRGB/COMPONENTまたはコンポジット |
HDMI × 2(メイン/プレビュー)、RGB/COMPONENT、USB3.0 | 720p/1080p30 | XLRマイク 4本使用可 |
VR-1HD |
ふつう | 高い | HDMI × 3 | HDMI × 3(メイン/プレビュー/スルー)、USB3.0 | 480p/720p/1080p30 | XLRマイク 2本使用可 |
ATEM Mini Pro |
ふつう | 安い | HDMI × 4 | HDMI、USB | 1080p60 | ステレオミニマイク 2本使用可 |
Blackmagic Web Presenter | かんたん | 安い | HDMI、SDI | HDMI、SDI × 2 | 720p | XLRマイク 1本使用可 |
ちなみにご紹介する機材はいずれもUSBビデオクラスと呼ばれる規格に対応しているため、USBでPCと繋げば機材はWebカメラとして認識されます。(おまけの機材は除く)
つまり「Zoom」や「WebEx」といったビデオ会議ツールや、「Skype」や「FaceTime」のようなビデオチャットはもちろん、「YouTube Live」のウェブカメラ配信にも、そのツール上でデバイスを選択するだけで即映像、音声が取り込まれ、配信できます。
ということで、
ビデオスイッチャーだかキャプチャーだかなんだか難しいことを言っているぞ、わけわからんぞ
とお思いの方も、実はウェブカメラとして扱われているだけですので、そんなに難しく考えないで気楽に読み進んでみてください。
USBビデオクラスとは(外部リンク)
Roland VR-4HD
こんな人におすすめ- 映像も音声も、1台で完結させたい人
- きちんとしたマイクを使いたい人
- オフライン、オンライン問わず使用したい人
ここがポイント
VR-4HDは、映像のスイッチング、定番のPinPや様々なトランジション(映像切り替え)はもちろんのこと、音のミキシングも可能で、オーディオにエフェクトかけられて、さらにUSBループバック機能(※)も備わっている、様々なことを高い次元で実現できるAVミキサーです。
音声については、各チャンネルのレベル調整を自動で行う「オートミキシング機能」や「エコーキャンセル機能」を搭載。演者が複数人いるイベントでのワンオペにも一役買ってくれます。
他にも多彩なエフェクトやフィルターが使えますので、映像のみならず音声もこれ1台でこなせます。
一見すると難しそうですが、上の画像のように入力したソースごとに操作するブロックが分かれていて、さらに調整しやすいフェーダーまでついていますので、すぐに操作のしやすさを実感していただけると思います。
モニターが内蔵されているので本機だけで入力映像の確認ができるのも強みです。
VR-4HDの活躍の場はオフラインイベントだけではありません。
パソコンとUSBで繋ぐだけでドライバがインストールされ、ビデオおよびオーディオデバイスとして認識させることができるため、後は配信用ソフトウェアでVR-4HDを各デバイスとして選択するだけ。(先に説明したUSBビデオクラスというやつです)
難しい操作をせずにオンラインのネット配信も行えますので、お手軽かつ安定した配信をお望みの方も、VR-4HDがおすすめです。
※ USBオーディオのループバック機能を使えば、マイクで入力した音声とPCで流す音声をミックスした状態でパソコンに戻すことができるため、パソコンで録画をしたりネット配信をしたりする場合に活躍します
さらに詳しい機能などは以下タップで展開。
細かな点ですが、ミニD-sub15ピンやRCAを使う必要がある方はVR-4HD一択になります。
- VR-4HD その他の特長
-
レンタル料金 15000円〜 映像入力 INPUT 1〜3 : HDMI
INPUT4 : HDMIまたはRGB/COMPONENT(ミニD-sub15ピン)またはコンポジット(RCA)映像出力 MAIN OUT : HDMI、RGB/COMPONENT(ミニD-sub15ピン)
PREVIEW OUT : HDMI
USB3.0配信画質 720p30/1080p30 音声入力 AUDIO IN 1〜4 : XLR/TRSコンボ
AUDIO IN 5〜6 : RCA
AUDIO IN 7/8 : ステレオミニ
USB音声出力 AUDIO OUT : XLR、RCA
AUX OUT RCA
USB
ヘッドホン(ステレオミニ)その他 タッチパネルディスプレイ搭載 外形寸法 / 重量 339 × 217 × 87mm / 2400g
Roland VR-1HD
こんな人におすすめ- ライブ配信したい人
- 自分自身が演者でもある人
- きちんとしたマイクを使いたい人
- ボイスチェンジャーを使いたい人
ここがポイント
VR-1HDはVR-4HDと同様、1台でオールマイティにこなせるミキサーとなっていますが、本体で操作できる内容が少なくなり、とっつきやすさが向上し、さらに映像の自動切り替え機能が充実(※1)。
レンタルでは取り扱いがありませんが、フロントパネル上でグースネックマイクが使えるため、ソロ配信にちょうどいい機材。
本体パネル上に合成映像の表示切替ボタンが5つも用意されているため、ボタンをワンタッチするだけで演出を行えます。あらかじめ独自の設定に変えておけば、プリセットだけではなくオリジナルを呼び出すこともできます。
VR-4HDにもあった「オートミキシング機能」などのオーディオエフェクトをはじめとした音の機能も充実。
USBメモリー(※2)から読み込ませた音楽ファイルを [BGMボタン] または [SEボタン] に割り当てて使用することもできますので、ライブ配信中に一人で演出まで行う場合に役立ちます。
※1 映像の自動切り替えには、マイクの音から話している人を捉えたカメラに切り替えたり、演奏やテンポに合わせて切り替えたりなどがあります
※2 USBメモリーからは音楽ファイル(WAV)以外に静止画も読み込ませることが可能です
またVR-1HDには他の機種にはないボイスチェンジャー機能も搭載していますので、生配信中のちょっとしたアクセントとして優れた効果を期待できます。ただし設定自体はメニュー画面からしか行えないのが残念です。
最後に、注意して欲しい点と個人的に残念に感じた点です。
VR-4HDや下で紹介するATEM Mini Proと違い入力映像の一括確認(マルチビュー)ができないため注意してください。
またライブ配信に最適と謳うなら、1台のハードウェア上でPinPが複数できたら最高でした(※3)。その辺りは餅は餅屋、V-8HDやXS-1HDといった高度なスイッチャーを使えというローランドからのメッセージでしょうか。
- マルチビューが必要な人
- マイクを3本以上使いたい人
※3 キー合成を併用すればできなくはなさそうですが…
- VR-1HD その他の特長
-
レンタル料金 10000円〜 映像入力 INPUT 1〜3 : HDMI 映像出力 MAIN OUT : HDMI
MONITOR : HDMI
THRU : HDMI
USB配信画質 480p30/480p60/720p30/720p60/1080p30 音声入力 MIC IN 1〜2 : XLR/TRSコンボ
LINE IN : RCA
USB音声出力 LINE OUT : RCA
USB
ヘッドホン(ステレオミニ)外形寸法 / 重量 314×169×66mm / 1600g
Blackmagic ATEM Mini Pro
こんな人におすすめ- ライブ配信´が´したい人
- 1080p60で配信したい人
- なるべく低予算で、多機能を使いたい人
- Blackmagic社のカメラを持っている人
ここがポイント
ATEM Mini Proは、4入力のHDMIスイッチャー機能、HDMIのキャプチャー機能を1台に凝縮し、コンパクトな筐体ながら映像合成エフェクトや音声のミキシング(※1)、カメラコントロール(※2)までもできてしまう、RolandのVRシリーズに負けていない多機能なライブスイッチャーです。
下位モデルATEM Miniは、おどろきの低価格で注目された2019年末に発売された機材。僅か数か月で登場したATEM Mini Proは、ATEM Miniには無かった「マルチビュー機能」や「PCレス配信機能」などが追加された上位機種です。
フェーダーやノブはなく、すべてボタン操作で行うのが特徴(※1)。
音声出力はエンベデッド(すべて出力に組み込まれる)のみですが、HDMIおよびMIC INにはONOFFや音量調整が個別操作可能となっています。また実際に配信されているときのみ鳴らすといったこともAFV(オーディオフォロービデオ)ボタンを押すだけで可能です。
※1 本体パネル上で行えることは一部で、トランジション設定をはじめ静止画ファイルの管理やオーディオミキサーなど、多くの機能は「ATEM Software Control」というコントロール用の専用ソフトウェアで行います
※2 カメラコントロールはBMPCCといったBlackmagic社製のカメラのみ対応します(2020年4月現在)
このようにATEM Mini Proには魅力的な機能が満載ですが、向いていない使用目的や、できないこともいくつかあります。
例えばネット配信機能に特化しているため、オフラインイベントでビデオスイッチャーとして使うものではない、といった点があげられます。
他にもこのようなものがあります。
・PinPは1窓固定で、表示位置も四隅のいずれかのみ(原則)
・SPLIT表示は専用ソフトウェアからしかできない
・音声モニタリング用のヘッドホン端子がない(HDMI OUTやマルチビュー画面でステータス確認はできます)
まとめるとこのような感じでしょうか。これがデメリットにならない方にとっては、全く問題なく使えるスイッチャーです。
向いていない人- オフラインで使いたい人
- ヘッドホンによるモニタリングが必要な人
- 音にもこだわりたい、XLRマイクを使いたい人
と、比較する上であえて悪い点を挙げましたが、今回紹介する機材のうちATEM Mini Proのみ1080p60で配信することができます(VR-1HDなどは1080pの30fps)。60フレームが必須な案件もあり得ますので、他にはない大きな強みと言って良いでしょう。
以下タップで細かな仕様をご確認ください。
- ATEM Mini Pro その他の特長
-
レンタル料金 5800円〜 映像入力 INPUT 1〜4 : HDMI 映像出力 USB OUT(MAIN)
HDMI OUT配信画質 1080p60 音声入力 MIC IN 1〜2 : ステレオミニ 音声出力 USB その他 PC使わない直接配信可 外形寸法 / 重量 237.5 × 103.5 × 35 mm / 550g
Blackmagic Web Presenter
こんな人におすすめ- なるべく低予算でライブ配信´が´したい人
- 超かんたんに手持ちのカメラをWebカメラ化したい人
- 1080pの解像度が必要ない人
ここがポイント
Blackmagic Web Presenterは、これまでご紹介してきた機材のような多彩な機能は一切なく、単純にHDMIなどでつないだカメラをパソコン上でWebカメラとして使うための変換機になります(※1)。
映像の合成や音量の調整も行えませんが、難しいことを考えずに、カメラとPCを1台ずつ使って一人がネット配信する、といった用途に最適な機材と言えるでしょう。
注意点としては、配信時の解像度が720p固定となることがあげられますが、一般的なビデオチャットやビデオ会議においては必要十分なスペックとは思います。
もしより高画質な1080pを望まれる場合は、別機材を使いましょう。
※1 SDIビデオとHDMIビデオの2入力を切り替えて表示させることは一応できます
詳しい機能は以下タップで展開できます。
XLRマイクやRCAのアナログオーディオが使えるのは、同じBlackmagicのATEMシリーズとは異なる点で、用途によっては選択肢となりえる機材です。
- Blackmagic Web Presenter その他の特長
-
レンタル料金 5000円〜 映像入力 HDMI IN、SDI IN 映像出力 HDMI LOOP OUT、SDI PGM OUT / SDI LOOP OUT 配信画質 720p 音声入力 XLR LINE/MIC IN、RCA IN 音声出力 USB 外形寸法 / 重量 140 × 170 × 44mm / 620g 以前の特集でWeb Presenterを使った「YouTube Live」での配信方法をご紹介していますのでよろしければどうぞ。
Web Presenterでライブ配信にチャレンジ
Roland V-8HD(おまけ)
こんな人におすすめ- 4入力よりもっとたくさんの機材をつなぎたい方
- オフライン´で´使う方
- より高度な演出を行いたい方
- タップして続きを読む
-
V-8HDはこれまで登場した機材のような配信のための機能はありません。混じりっ気のないピュアな「ビデオスイッチャー」となります。
完全に別機材枠となりますが、なぜ紹介するのかと言いますと、より大きなイベントなどでは4入力では足りなくなることも多いからです。このV-8HDは、HDMI 8入力 / 3出力という圧倒的な拡張性を持ち、それに伴った映像合成や出力の柔軟さを兼ね揃えています。特に最大5枚までの映像を合成できるため、演出の幅が大きく広がります。
VR-4HDやATEM Mini Proだけでは思い描く使用用途に満たないかも?といったときに、V-8HDを一緒にレンタルしてみてはいかがでしょうか?
音声収録について(おまけ)
最後により良い音声収録のためのマイクについて解説したいと思います。
- タップして続きを読む
-
いろいろなビデオスイッチャーをご紹介しましたが、一番良質な音を収録するにはXLR接続のマイクを使う方法でしょう。
VR-4HDのようにビデオスイッチャーにXLR端子のMIC INがあれば、業務用の高性能なマイクをつないで使うことができます。レンタルで取り扱いがあるSM58は、業界でも定番中の定番マイクです。一方XLR端子がないATEM Mini Proですが、ステレオミニのマイク入力ならあります。この場合は以下のようなプラグインパワー対応のマイクが使えます。
「プラグインパワー」とは、繋いだ機器から電源が供給されるしくみです。
実はビデオスイッチャーにマイクを直接つながなくても、良い音声を収録する方法はあります。カメラで撮影する際に、映像だけでなく、音も録ってしまえばいいのです。
スイッチャーとつなぐHDMIは映像と音声と、どちらも伝送できますので、HDMIケーブル1本で両方とも賄ってしまおうという作戦です。カメラ用マイクと言ってもいろいろありますが、インタビューなど一人の声をきちんと捉えたい場合はECM-GZ1Mのようなマイクを(「単一指向性」や「鋭指向性」などと表記されている)、やや広い範囲の音を捉えたい場合はECM-XYST1Mのようなマイクを選ぶとよいと思います。
さらに本格的なマイクが使いたいなら、XLR接続のマイクも選択肢に入ります。
業務用のカメラならXLR端子があるものがほとんどのためそのまま接続できますが、(ソニー製の)民生用カメラの場合はXLRアダプターを使う必要があります。もちろん、一眼カメラに最適なマイクもあります。ソニーαシリーズなら上述のXLRアダプターも使えます。
ビデオカメラでも一眼カメラでも、共通して言えることは、カメラで音を収録する場合は必ず外部マイクを使うことです。カメラ本体でも収録できますが、外部マイクを使うとき以上に周辺環境等に影響を受けやすいため、思った以上に残念な音になりがちです。
繰り返しになりますが必ず外部マイクを使って撮影するようにしてください。